スクランブル・ウィザード

スクランブル・ウィザード (HJ文庫)

スクランブル・ウィザード (HJ文庫)

【ストーリー】魔法を使える人間”魔法士”が国家財産として保護されている世界。魔法士のエリート機関「内閣府特別対策局」に所属する椎葉十郎は、同僚の能登と共に、ある事情から魔法士育成校へ教官として派遣される。そこで慣れないながらも教師をするが、そこの生徒の雛咲月子の扱いに四苦八苦する。そんな中、反魔法主義を掲げるテロ組織が学校を襲撃する!十郎は生徒たちを守ることができるのか!?

第二回ノベルジャパン大賞受賞作品第一弾!


何となく表紙に惹かれて衝動買いしたんですが、これは大当たりでした!
名前だけは知っていたんですが、魔法がテーマな作品は一歩間違えるとただの戦闘モノになりがちなので避けていたんですよ

だいたい魔法と言うと、ただ漠然と魔法が使えるという話とちゃんと理論が確立している話がありますが、これは後者ですね。後者は理論がしっかりしていて制限がある分頭脳戦になるので、ただのバトル物のような読む煩わしさは無くて面白いです。
特にこの本は、確かに魔法を使う人間は化け物じみた強さはありますが、主人公の戦い方からして強さのインフレ現象は起きません。簡単にいえば、かなり苦労して勝つタイプ。最後はボロッボロになってますし。

ストーリーは
仕事上のミスで椎葉十郎と同僚の能登一哉は魔法士を育てる学校、現実で言う小学校に派遣されるところから始まります。
しかし、能登は表面上温厚で問題はないものの、十郎は無愛想・面倒臭がり屋で先生には向いてない性格をしています。ところがあることを切っ掛けに担当するクラスの委員長・雛咲月子と多く関わりを持つことになり、その後打ち解けていくものの、十郎と月子が不在の間に反魔法主義のテロリストに学校を占拠されてしまうという流れです。

この、椎葉十郎と雛咲月子と言うキャラクターは今までにあまりない組み合わせで新鮮でした。だって二十代と小学生ですよ!?
こう言うと色々と怪しく思えるかもしれませんが、内容はいたって健全なので安心してください。
前半部分では面倒臭がり屋と優等生と言うこともあって相性最悪なんですが、中盤から後半にかけての和解していく様子が見ていて微笑ましいですね〜。
十郎は乱暴な物言いで確かに無愛想なんですが、内面はとても面倒見がよく、月子も優等生という仮面をかぶってはいますが、実は甘えたがり屋で若干妄想癖ありな感じで面白かった。

他にも特徴的なキャラクターが出てきます。
十郎の同僚で、表面は温厚に見えるけれど、敵は徹底的に殲滅しなくては気が済まない非情な性格の能登一哉。彼は今後どう動くかとても心配ですね〜。
大抵こう言うキャラは物語の中盤くらいで敵に回ったりするのでコイツは要注意!

この作者の特徴として、チョイ役にもしっかりとしたキャラクターを設定しているところがあると感じました。
十郎たちの赴任してきた学校に勤める嘉神祐平や出雲井信乃も、この二人をメインとした物語があっても不自然でないくらいしっかりとしたキャラ設定があります。更には大抵使い捨てで終わるであろうテロリストの首謀者にも何らかの複雑な過去を持たせていたりと、キャラの一人一人が人生を歩んでいる、そう印象付けられました。

絵師さんも絵が丁寧なのは言わずもがな、特に一ページの中のコマ割りがうまいな〜と思いました。

一巻ではまだまだ始まったばかりで、人間関係や背景などもこれから発展していく匂いがするので、二巻以降、キャラクターの変化が楽しめそうす。