読書の時間よ、芝村くん!

読書の時間よ、芝村くん! (一迅社文庫 に 2-2)

読書の時間よ、芝村くん! (一迅社文庫 に 2-2)

【ストーリー】早崎夏耶は十年ぶりに故郷の町に帰ってきた。そして転校先の高校で幼馴染&初恋の相手である「芝村和樹」に再会する。
そんなロマンチックなシチュエーションにもかかわらず、当の和樹は夏耶のことをさっぱり忘れていた!
そして放課後、和樹に自分を思い出させようと図書室まで追いかけるが、和樹は黒髪ロングのお嬢様である「香坂春奈」と一緒にいたのだった。しかし次の瞬間、光に包まれ気が付くとそこは本の中の世界だった!

三人と一匹(?)が繰り広げる、不思議旅行と切ない三角関係の物語が開幕する!


最近本の世界・人物が出てくる話をよく見かけるな〜(「司書とハサミと短い鉛筆」や「ブック×マーク!」など)

この物語も本の世界に入り、本来ならあるはずのないバグ(マビノギ)を回収する、というファンタジーアクション系のお話でした。
でもなかなか面白かったですね〜。確かに本の中の世界で冒険するお話なんですが、それと同時に夏耶と春奈の和樹をめぐるやり取りも見所です。

主役のヒロイン二人は、

和樹の幼馴染で、明るく活発な夏耶。

「そこがどこだろうと!それがなんだろうと!和樹が行くならあたしも行く!以上!」

現実への興味がなく、他人に対してかなり冷たい態度をとる香坂春奈。

「私はこの世界が嫌いだし、この世界も私が嫌いです。世界も私も、価値がありません。」

この二人が和樹をめぐる三角関係を成します。
ですが、三角関係と言ってもドロドロな関係という訳でなく、二人とも正々堂々といろんな意味で戦っているので爽快な気分で読めます。

そして問題の和樹なんですが、ヒロイン二人に対してあまりにキャラが薄い・・・
別に活躍してないとかそういう訳ではないんですが、どうも目立たない。一巻は若干状況把握に費やされることが多かったとはいえ、あまりに空気。それが唯一のマイナスポイントですね。というかこの物語の主人公はヒロイン二人なのかな?

あと忘れてましたが本の世界の案内役、カメ(?)のステラさんもいますが、これまた存在が薄い。
必要なポジションとはいえ、もうちょっと何とかならなかったのかな?
この作品はヒロイン二人が良い分、サブキャラのクオリティが低いんですね〜
結局最後までカメである意味が分からなかったし。


本の中の世界に関する設定もなかなか味がありました。
この巻ではシンドバッドやアーサー王が出てきますが、本来のイメージどうりのキャラではなく、少し変った性格をしているのもいい演出ですね。
本の中の世界の住人たちは「物語の登場人物」にもかかわらず、恋をしたり悩んだりと架空の人物だということを忘れるほど生き生きとしています。

本の中でのストーリーも元ネタに沿ってはいるものの、この作者の肉付けによって現代っぽくアレンジされているので原作を知らない人も楽しめると思います。特にマーリンとヴィヴィアンの話はある意味この巻の二つ目のメインとして扱えるほど良くできていました。


全体を通してみると、ややストーリの流れが速い気もしますが、それでも読みごたえのある作品でした。
次が出るとしたらもう少し一本の物語に集中して、ヒロイン二人以外にスポットを当ててほしいですね。