ツバメ

最近、久しぶりにツバメが家の玄関先に住むようになりました。

実は私はツバメの巣にちょっとした苦い思い出があるんです。



たしか小学校高学年くらいの頃だったと思うんですが、当時は毎年のように春になるとツバメがやってきて雛を育てていました。
早くて4月中旬ごろに卵が産まれ、数日後その殻が地面に落ちているのは新しいヒナが生まれたという証であり、とても喜んでいました。
5月に入る頃にはヒナたちの餌を求める鳴き声で目を覚ますこともしばしば。

そんな感じで朝、登校する時に玄関の壁にある巣を見るのは日課となっていました。


そんなある日、学校から帰ってくると玄関のあたりでエサを求める鳴き声とは違う、明らかに弱った鳴き声が聞こえました。
何があったのかと思い、あたりを見回すと玄関の片隅にヒナが巣から落ちていました。

そんなことは今までになく、どうしたものかとかなりあせりましたが、玄関の前の電柱に親鳥がとまって心配そうに見ています。
それを見て、何とかして落ちてしまったヒナを助けたいと思いました。

よく漫画なんかであったように、巣の中に戻してあげようと私は弱ったヒナを新聞紙の上に乗せ、脚立を使って巣の中に戻そうと試みました。
しかし、巣は天井ぎりぎりのところに作ってあるので、なかなか思うように戻してあげられません。

しかし始めてから10分後、なんとか巣の淵にヒナを戻すことができました。
私はヒナを助けたという達成感に満足して、家の中に帰って行きました。




ところがその数日後、思わぬ結果を招いてしまいました。
それは、巣の中にいたヒナが全員死んでいたのです。




どうもあの後から親鳥はその巣へは二度と来なくなっていたようです。

後からわかったことですが、鳥の世界ではヒナが巣から落ちたということは死と同義で、それがまた巣へ戻るということは自然界ではありえず、そのため私が落ちたヒナを巣に戻したことは、その世界を狂わせたということになってしまいました。

結果、私のしたことはヒナたちを余計に死なせる原因を作ってしまったのです。

その事実を知った時から、人間は自然界の動物とは違う生き物であるということ共に、正しいことは必ずしも正しいとは限らないとわかるようになりました。



今日もツバメがヒナを育てています。