断章のグリム(2)ヘンゼルとグレーテル

初版が2006年なのに何故に画像が無いかなアマゾン?

【ストーリー】市立第一高校に通う時槻雪乃に唯一話しかけるクラスメイト、姫沢遥火は通学中に過去のトラウマを思い起こさせられるような怪奇現象に遭った。それは誰も乗っていないはずの車の窓に、赤ん坊の手の後が浮かび上がってくるのだ。同時刻、白野蒼衣は『神狩屋』で<グランギョニルの検索ひき>と呼ばれる大きな<泡禍>の予言を受けていた。人食いの物語―ヘンゼルとグレーテルの予言を…

悪夢の幻想新奇譚、第二幕。


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クラック!

そんな童話の合言葉で始まる物語の第二巻です。
1巻の童話的恐怖(あるいはグロテスク)な雰囲気から変わらずに展開されるお話は、この手のジャンルが好きな人にはたまらないシリーズになってますね。

ただ注意が必要なのは1巻の感想の時も書きましたが、グロテスクな表現が苦手な人は読むのをよーく考えた方がいいってことですね。
私の場合文章上のグロテスクな表現は大丈夫なので、ずいぶん楽しませてもらいました。
考えてみればこういったグロテスクなジャンルって何気にライトノベル界では珍しくもないですよね?(水瀬葉月さん作品や藤原祐さん作品など)それだけ需要があるのかな?

私的には神狩屋さんの原典紹介のような、童話を語るシーンが実際に語り聞かせてくれているようで好きなんですけどね。


今回メインの童話となるのは、かの有名な「ヘンゼルとグレーテル」です。
ここで注目なのが、悪夢の被害者となるのは雪乃のクラスメイトということです。

1巻では蒼衣を物語の中心に置き、<悪夢>や<断章>の説明のために割かれる割合が多かったので、雪乃がどういった人物なのかという部分が少なかったんです。
ですが、被害者が雪乃の関係者ということもあり、2巻ではむしろ雪乃が物語の中心となって進みます。

「普通」を捨てた彼女が普段どういう生活を送っているのか。どういった思いで<悪夢>と戦うのか。そういった彼女の心の内側がわかる一冊でした。
普段周りにはぶっきらぼうに振舞っていますが、そんな彼女の素の部分が見えて<悪夢>とは別の苦痛が感じられました。

この一冊でわかったことがもう1つ。
大体のダークな雰囲気の作品には狂った人が多く見られますが、「断章のグリム」では敵(悪夢)以外の人たちは至って普通の人格者が多いんですよね。それが童話的な雰囲気を持つ要因なのかもしれません。
悲劇を前にして変に達観した様子を見せる人がいない分、読者が登場人物に感情移入しやすいんだと思います。


ストーリーは前回のように、はなっから救いようのない話というわけではなく、ちゃんと被害者と共に問題を解決していこうとするのですが、普通を捨て、疎外されている雪乃が遥火に段々と打ち解けていく分、悪夢の泡禍が弾けたときの辛さが際立ってます。
殺すわよ、とかツンツンしてる割にとても優しい子なんですね〜。そういう言動の一つ一つが実は誰かのためを思って出た言葉だったりするんで余計に優しく見えます。


またしても悲しい事件な内容でしたが、本の雰囲気やキャラクター達の掛け合いなども面白い一冊でした。
ちょっとダーク系のお話が苦手な人もチャレンジして読んでほしいですね!

読み終わって気付きましたが、今回蒼衣の見せ場ほとんど無いや…