葉桜が来た夏3 白夜のオーバード

【ストーリー】12月。学と葉桜は社会科見学の一環としてクラスで琵琶湖の<十字架>を訪れることになっていた。しかし、見学当日に何故か<十字架>には行けなくなり、その周辺を船で見学するだけとなってしまう。ところが、代わりに行った小島で白夜という少女に出会ってから事態は急変する。葉桜は少女に異様な執着を見せ、学が聞いても打ち明けようとしないのだった。


う〜ん…この作者は物語の背景やキャラクターの心理描写がとても丁寧で気に入っていたのですが、いかんせんストーリーが微妙…


琵琶湖に十字架型の宇宙船が落ちてきたという設定、女性のみで構成された地球人と瓜二つの宇宙人といったいい素材があるにもかかわらず、その料理の仕方…というより方向性が惜しいですね。

これだけの素材があれば甘々なラブコメだってできるし本格的なSFファンタジーだってできそうなのに、何故だか小難しい政治的な方向へ向かってしまっているんですよね。

別にそういった政治的なテーマを持って来ることは良いんですが、取り巻く環境があまりに大きすぎて主人公たちが手に負えていない感じがします。


この物語のテーマを簡単に言えば、宇宙人と地球人の和解への道、ということになると思うんですね。
それにしても主人公たちが直面する問題がいきなり過ぎ。
物語の初めからバランスが危うい状態で進むので、まだ学生でほとんど何もできない学は大きな勢力に振り回されっぱなしです。これでは主人公に感情移入している読者からしてもあまり心地よいものではないですね。

無理やり大人の世界に連れてこられた高校生という表現がぴったりな気がします。



この巻では今まで気丈に振舞っていた葉桜がその大きな勢力に振り回されてしまい、学は彼女を守るため動きます。
白夜という少女に異常な執着を持ち、その理由も言わない葉桜に対して、今までの学だったら即キレてしまうところを本気で葉桜のことを心配するという成長ぶりを見せてくれます。
更には彼女に気づかれないように問題の解決に一人奮闘するなど、今まで以上の活躍です。

これだけで見れば確かに良い物語なんですけどね…。
拾った鍵が重すぎるせいで学たちの活躍が霞み、読み終わってから結局なにを魅力にしているのかわかりませんでした。



残念ですが、総合して☆は2つです。
内容についてはあまり触れられませんでしたが、というより触れるとネタバレしてしまうので書けません。

どうしてもわからないのが、結局この作者はこの作品のどんな魅力を売りにしているのだろうということです。
すでに書いたように、この作者は喜怒哀楽の表現や動きが丁寧で、生き生きとしたキャラクターを書けますし、風景描写や設定なども申し分ないほどの実力を持っています。
ですが、肝心の「この作品特有の魅力」が何なのかわかりません。
なので、もしこの作者が新シリーズを書いたとしたら是非買ってみたいです。


まだ何とか続きを読んでみようとは思います。