幻想譚グリモアリス4 罪と祈りとほほえみと
幻想譚グリモアリスIV 罪と祈りとほほえみと (富士見ファンタジア文庫)
- 作者: 海冬レイジ,松竜
- 出版社/メーカー: 富士見書房
- 発売日: 2009/07/18
- メディア: 文庫
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【ストーリー】誓護とアコニットは辛くも麗王六花、ロードデンドロンの当主アザレアを懐柔することに成功。アコニットは一三星樹の権力を取り戻す。
しかし、戦闘が行われている間に誓護の最愛の妹・いのりが鈴蘭の手に落ちてしまう!
そして誓護はいのりを助けるためにグリモワール‐アイギス‐を持って鈴蘭の軍門に降ることを決意する…
前回やっと優勢へと傾いたと思ったら、あっさり人質を取られてしまってまたも不利な状況へ…。
なんだか予想外といえば予想外な展開だけど、攻守逆転してこれから反撃が始まる!と期待してたので、この展開はちょっと拍子抜けしてしまいました。
せっかく友軍が増えたにも関わらず新キャラクターたちの出番が極端に少なかったのが特に残念。
新キャラクターたちと既存のキャラクターのからみをもう少し読みたかったな。
割かれるページは少なかったけれど、前回敵組のエクレレールとスプニール、そして自称キングのオドラの三人の漫才(ボケ二人+ツッコミ一人)のようなやり取りとか、
アコニットに執着する
「だって、貴女ったら、一緒に寝てくれないんですもの」
「――え?」
貴方の行動なんてお見通しですわ、という答えを予測していたのに、アザレアはすねたような顔をして、全然違うことを言った。
「ですから、せめて気分だけでもご一緒しようと、貴女のベッドは特に意識していましてよ。あなたの可愛らしい寝息を耳元に聞き、そのぬくもりをこの肌に感じ、しどけない寝姿を舐め回すように見つめるのですわ♡」
(ストーカーともいう)アザレアは読んでて楽しかったんだけどな〜。
本編が佳境に入って来たのだし、ここらで短編集の1冊でも出してくれるとちょうど良い小休止になるんですけど、まだ短編集は出ないのかな?
ストーリー的には醍醐味であるはずの誓護の奇策も今回は何だか物足りなかったです…。
前回ようやく味方がそれなりに増えたことで、王:アコニット・軍師:誓護・騎士:オドラ・兵:軋軋といったチェスのような構図の集団戦法が楽しめたんですが、今回はそれ以前と同じ一対多の騙し合いなんですよね。
確かにそれはそれで面白いんですが、物語の佳境まで来て今までと変わらない戦い方だとちょっと退屈気味…。
誓護の奇策も何だか詰めが甘いというか…。
相手の心の中を読む鈴蘭の異能に対して誓護が執った策は、正直「夜想譚」1巻の二番煎じだし、切り札の部分が強引過ぎな気もしました。
文章自体に読ませる魅力があるので部分的には面白いと言えるんですけれど、”グリモアリス”シリーズ全体で考えるとこの展開はもっと以前の段階で入れるべきだったんじゃないかな?
●この巻で総合的に評価すると、
キャラクターの造形は言うまでもなく魅力的で、キャラクター同士の掛け合い部分は本当に面白いです。
そういう意味で、1巻1巻を別々に読むと十分楽しめます。
でも、シリーズ全体の展開スピードや構成が唐突過ぎな感じがあるので、必要な箇所はしっかり書いて、不必要な部分は短く、たまに日常編を入れて小休止、といったメリハリが欲しいですね。
どうやら次の巻あたりでまた一波乱ありそうです。
次の巻でもう少し勢いを取り戻してくれることを期待しています。