七夕ペンタゴンは恋に向かない
- 作者: 壱月龍一,轟そら
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2009/05/20
- メディア: 文庫
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【ストーリー】星無町はいつも決まって七夕の日に雨が降るため「7年に一度の”晴れ七夕”の日に、神様と交わした約束を守れば願い事は叶う」というおとぎ話のような伝承が残っていた。
湊・橙・伊緒・あかり・鈴の五人は、そんな町で同じ七夕に生まれ、共に育ち、”晴れ七夕”の日に「永遠の友情」を誓った特別な仲間だった。しかし、中学校最後の夏休みにあかりが転校し、その特別な関係は崩れてしまう。それから2年後、再びあかりが帰ってきた。これで元の関係に戻れると喜ぶ湊だったが…。
8月分の給料も入り少しばかり余裕ができたので、やっと以前シノさんに紹介していただいたこの一冊を購入!
●ペンタゴンは恋にむかない
う〜わ〜…、なんて切ない…。
読書中ずっと心が悲鳴を上げてました…。
幼い頃、町の伝承を信じて七夕の日に永遠の友情を誓った5人が時を経て高校生になり、恋と友情の狭間で葛藤する、とても苦しい恋物語。
安っぽい表現になってしまいますが、単純に言えば「友情をとるか恋をとるか」という恋愛ものではよくある葛藤を描いている作品なんですけどね…。
でも、幼馴染5人という特殊な状況と、そんな問題に絶対向いていない性格(天真爛漫。悪く言えば子供っぽい)の湊が主人公なので、とてつもなく心苦しい!
メジャーなところでいえば「こころ」のような、親友の2人が同じ人を好きになる三角関係と違って本当にどうしようもない状況だ…。正に「ペンタゴン(五角)は恋にむかない」ですね。
●一応ラブコメ
切ない切ない言ってますが、笑える場面や可愛いヒロインたちとのやりとりといったようにラブコメらしい部分が中盤までは頻繁にあるんですよね。
子供っぽい湊・クールな橙・しっかり者の伊緒・黒魔術を使う怪しい鈴・ツンデレなあかり。
5人ともかなり個性的で面白いキャラをしているんで、ギャグパートなんかは油断してると腹筋を持ってかれます。
特に湊と橙のコンビがお気に入りですね。
大半は湊がボケなんですけど、橙も天然なところがあって面白いんです。
・このコンビの中でも特に面白かったシーン
――湊をある人物に見立てて橙が告白する練習をする、というシチュエーション――
「わかった…わかったよ。俺も真面目にやってやる」
意を決したように、橙が湊の肩を掴む。
(お…)
端正な顔立ちと鋭い眼差しが、湊の顔を正面から射抜くように見据える。
おそらく、橙からは湊の顔がぼやけて見えているのだろうが。
湊は、自分が女の子(中略)だったらと、内心でセットする。
「お前のこと…昔から、ずっと好きだったんだ。俺とつきあってくれないか?」
真剣な橙の表情と声色。すこし見えにくいのか、瞳を細めると、光彩がわずかに潤んでいるように見えて。それが妙な色っぽさに変わっている。
思わずキュンとしてしまう湊がいた。
ないりきっているとはいえ、男の湊でさえ、こうなのだ。
腐女子の皆さんが喜びそうなBL的光景がっ!(因みに場所は準備室&橙は眼鏡オフ)
…何故か作者の人もここにはやけに力のこもった描写をしてましたw
●ただ…
ラブコメらしい笑いと明るさ、シリアスな恋愛模様。
一つの話にまとめるにはかなり難しいこの二つの要素をここまで違和感無く描かれていて、とても魅了されました。
でもね…最後の締めがどうしても受け入れられなかったんです。
理由を書くとモロネタバレになってしまうんで書くに書けないのですが、敢えて言うならばどうしてもあのオチがそれまでの雰囲気からちょっと離れてしまった気がするんですよね。
確かにあの状況ではあのオチじゃないと締めくくれないとはわかるんですけど、最後の部分だけ作品の中から浮いているように思えるんです。
感動的な場面なハズなのに、その違和感が引っ掛かってストーリーに入り込めませんでした…。
●総合
完全に個人的な嗜好の問題ですけど、本当に惜しかった…。最後さえ受け入れられれば間違いなく☆5はいったんですけど…。
でも、それまでのストーリーは青春真っ只中の少年少女たちの心の痛みがこちらまで伝わってくるほど素晴らしい作品です。
シノさんがおススメする理由も良くわかります。
私はダメでしたが、最後のあのオチが受け入れられる人ならば間違いなく気に入る作品ですね。