とある飛空士への恋歌3
- 作者: 犬村小六,森沢晴行
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2009/12/18
- メディア: 文庫
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【ストーリー】灼熱の日差しが降り注ぐ中で過酷な『陸戦訓練』を受けるカルエルたち飛空科の生徒。未知の敵が現れたことで戦争の覚悟もできていない生徒たちは日に日に不安を増していくが、そんな状況でも少年と少女たちは友情を深め、恋をし、お互い大切な存在になっていく。
そしてついにイスラは「聖泉」へ到達し、これより先は「空の一族」の支配する領域。程無くして空の一族との戦闘がはじまり、カルエルたちは後方索敵を余儀なくされる。
―――「ただみんなと一緒に空を飛びたかった」そんな彼らにも現実は容赦なく凶刃を向け、次々に誰かの大切な人を奪っていく…。
●美しくも残酷な空
遂に聖泉へとたどり着いたイスラ。これからは未踏の地で何があるかもわからないのに未知の敵「空の一族」まで現れ、怒涛の急展開。
それでも前半は今までと同じような、もしくはそれ以上に楽しい雰囲気で思わず笑ってしまう箇所も。
「ここはセンテジュアルの町だよ」しか言わない友人1のその淡白なセリフに何故か吹いてしまいましたし、まるで劇薬のように食べた者をトリップさせ、一部の選ばれた人間は連れて行かれる(何処にだ)アリーメンはその部分だけグルメ漫画如きの濃密な描写で笑わせてくれました。
特に今回は飛空科のクラスメイトたちに多くスポットが当たっていたのですが、とてもリアルな等身大の描写で感情移入しやすかったです。
でも彼らに深く感情移入したからこそ、それ以降の展開が読んでいて辛かった…。
●「――生きて欲しい ――どんなことがあっても」
中盤以降は次々に誰かの大切な人が死に逝くシリアスな空戦。
「空の一族」という明確な敵が現れたことで人死にの出る戦闘は起こるだろうとは思っていましたし、明らかな死亡フラグもありました。
それでもみんなが笑顔で明るい学園生活を見た後では「飛空士見習いと言っても学生だし、きっと大丈夫だ」という気持ちを捨てられませんよ…。
飛空科の生徒たちは殆ど出番がなかったり目立たなかったりしても、誰もが何かしらコンプレックスを抱えていたり一緒に暮らしているうちに気になる人ができたり、人を殺す覚悟なんて、まして死ぬ覚悟なんて全然できていない少年少女なんですよねぇ…。
それでも大切な仲間には生きて欲しいと一生懸命戦う姿に泣けずにはいられません。
●総合
☆5つ。
中盤から悲しくて悲しくてしょうがなかった。もっと彼らの明るい話を読んでいたかった…。
カルエルは友達の多くを失い、大切な人にまで戦争の凶刃が及んで自身も深く傷つき、これから彼がどう変わってしまうのか心配です。
そして最後、まさかの「あの人」の名前が!
「海猫」の飛空士ともどもとても気になるところです。
私としては「海猫」の人はやはりもう一人の「カール」だと思うのですが…。あ、そう言えばあの作戦名は…。