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薔薇のマリア Ver0 僕の蹉跌と再生の日々

感想 角川スニーカー文庫 薔薇のマリア シリアス ファンタジー アクション 十文字青 BUNBUN ☆☆☆☆☆

薔薇のマリアVer0 僕の蹉跌と再生の日々 (角川スニーカー文庫)

薔薇のマリアVer0 僕の蹉跌と再生の日々 (角川スニーカー文庫)

【ストーリー】漆黒のダンジョンに、お宝目当てで潜り込む美しき《侵入者》がいた。名はマリアローズ。外見以外に取り柄のないマリアにとって、チマチマ稼ぐことが唯一の生きる道だった。ある時、ド派手な鎧に身を包むなぞの大男とその仲間に誘われ、危険度最悪の”閉鎖魔宮”に潜入することに。慣れない集団戦、おのれの弱さに絶望、くじけそうになるマリアに対し、謎の大男のとった意外な行動とは!?史上最弱の主人公と誇り高き仲間たちの最初の物語登場!

実はラノベを読み始めた当初から何気に気にはなっていた作品。
でも他の方の感想を見る限り暗く、物凄いシリアスな話という印象があって敬遠していましたが、今回ub7637さんにおススメして頂いたのを切っ掛けに手を出してみました。


薔薇のマリア』シリーズはこれが初めて読んだものになるのですが、Ver0というサブタイトルからどうやらこれは外伝的なもので、本編の前日譚的な位置になるのようですね。



そして内容ですが、
主人公のマリアローズは数々の魔物を封じ込めた土地の上にあるサンランド国の首都エルデンに住み、日々、魔物を封じ込めたダンジョンに潜入しては魔物を倒し、魔物の所持する金品を獲って遣り繰りしながら生活する《侵入者》、というさながらダンジョン系のRPGか『モンハン』(やったことないですけど)のような世界です。しかも例え死んでしまっても僧院に頼めば生き返らせてもらえたり、魔法や悪魔なんかが出てきたりとホントにゲームのような設定ですね。


でも実際《侵入者》の人たちの大半は確実に勝てる弱いモンスターを倒す毎日で、たまにちょっと強いモンスターに挑戦しては痛い目にあったり、死んでしまったり、同じ人間に追い剥ぎをされたりと1日1日を活きるのに精一杯で、そこにはゲームのような”楽しさ”のようなものは一切なく、もし実際の世界がダンジョンRPGゲームのような世界だったらこんな感じになるんじゃないかと思う位人々の生きる姿勢がリアル。

《侵入者》にしても、字面は格好良くても(言い方は悪いですが)現実で言えばその日生活できる分の仕事しかない貧民層のような生活で、そんな《侵入者》の中でもマリアローズは美しい外見以外大して実力があるわけでもない上に一人で行動しています。

いくら僧院に行けば生き返れるとは言え、モンスターに囲まれて蘇生不可能なまでに殺されてしまえば生き返れないし、僧院まで死体(自分)を運んでくれる仲間がいなければそのままモンスターの餌になってしまうことを考えればダンジョンでの単独行動は異様なもの。


それでもマリアローズが単独行動する理由というのがこの本の核心部分になってくるんですが、マリアローズという人間がどういう人物なのかわかってくるほどその理由もわかってくるんですよね。

説明しようとすればものの数行で説明できるんですけど、それがわかってきたときには既にマリアローズにどっぷり感情移入しちゃってるんですよ。それまでの他人を突っぱねてたマリアの本音の部分が見えて、切ないような悲しいような、とにかく心が締め付けられる感じ。
大男、トマトクン(本名らしい)と変人な仲間たちがどれだけありがたい存在に見えたか…。



史上最弱の主人公

と、あらすじにも書いてあるように、マリアは何か特別な力や異能を持っているわけでもないし、かと言って自分が敵わない敵には絶対に立ち向かおうとしないし、モンスターに囲まれても気にすることなく女の子一人を残して逃げるように一般的に言う主人公(ヒーロー)らしさはありません。直ぐ落ち込むし、八つ当たりもしますしね。
それでも自分が如何に弱いか痛いほど知っているからか、または彼の深いところまで知ってしまったからか、むしろそんな人間臭さに好感を覚えます。もしくは共感と言っても良いかもしれません。

《侵入者》のグループ《ZOO》のリーダー・トマトクンとその仲間たちが、大失敗して逃げたマリアを見捨てないで”仲間”と言ってくれた時は、マリアの心情を知って深ーく感情移入していた分涙線に来ました…。


以前ub7637さんの言っていた「どん底からの再生」もよくわかりましたよ。
シリーズものだけど、この一冊の中でマリアは徹底的に落ち込んで(どん底)、その後に《ZOO》の仲間たちのおかげで立ち上がる(再生)、とそのコンセプトが成り立っているんですね。


総合

☆5つですね。

あまりストーリーの内容は書けませんでしたが、とにかく濃密なんで書こうとしても書ききれませんね。

正直言うと「ANGEL+DIVE」とか「いつも心に剣を」などの十文字先生の作品らしい暗い部分(?)が見当たらなくて驚きました。

個人的には「ANGEL+DIVE」などの一貫して暗い雰囲気のシリアス話よりも、こんな感じに明るい雰囲気も暗い雰囲気もあるシリアスなら全然読めるので、このシリーズはこれから読んでいこうかと思います。


買おうか迷っている方は1冊のなかで一応ストーリーは完結しているんで試しに買ってみるのもありですね。


改めて紹介してくださったub7637さん、ありがとうございました!