”文学少女”見習いの傷心。

【ストーリー】「きみが大嫌いだ」心葉にそう告げられてしまった菜乃。その日以来、心葉は本心を見せず、取り繕った笑みで菜乃に接するようになる。そんなのは嫌だ! と、夏休み、菜乃はある行動に出るが……。傷心の夏が過ぎ、秋。文化祭に向け賑わう校内で、菜乃はまた新たな出逢いを体験する。不吉な影を背負った少女。彼女に関わる中で、菜乃は彼女の、そして心葉やななせ、皆が様々に心に抱える闇と光を見つめることになる。もうひとつの"文学少女"の物語、第2弾!!

一度は完結したと思った”文学少女”が”文学少女”見習いとして再出発したシリーズの2巻目。

新しい主人公の菜乃が前シリーズにはいなかった明るく元気一杯なキャラということもあって作品の雰囲気がガラリと変わりましたが、それでも相変わらずある人物の隠された一面だとか裏の顔みたいな「人の暗部」の書き方がすごいですね…。


しかも今回出てくる作品が「みずうみ」と「フランケンシュタイン」というこれまた恋人同士の切く苦しいものだったり、人に潜む狂気を嫌というほど見せつけられるような展開が盛りだくさんな作品です。
そんな作品たちが題材となればそりゃ本編の方もそれなりに深い話になりますよね。まぁ、そこからの”更なる一歩”がこのシリーズの真髄というか魅力なんですけれども。

でも1巻の時点ではその”更なる一歩”を見せてくれていた遠子先輩がいないこともあって、どこか”文学少女”シリーズとして書けているものがあるように感じていました。
今回文芸部の合宿として麻貴先輩の別荘に行った菜乃が、心葉の前で必死に遠子先輩の真似をして物語の味を語った時に言われた「誰も遠子先輩にはなれない」という言葉は的を得ていますね。例え1巻のように心葉が遠子先輩の代役として”想像”しても、やっぱり何か違う…。



そこで登場するのが”文学少女”見習い

上にも書いたように彼女は”文学少女”シリーズには多分初めてじゃないかと思われる「殆ど暗部を背負っていない天真爛漫でまっすぐ」なキャラで、良く言えば「明るく真直ぐ」悪く言えば「(人生など諸々の)経験が浅い子供」です。心葉に好かれようと一生懸命遠子先輩の真似をしたり純粋と言えば純粋なんですけど、人の暗部を知らない未熟な「真直ぐさ」なんですよね。

それが今回の合唱部の事件で、人には受け入れ難い一面があって、愛情は簡単に憎しみに変わることもあるということを身をもって体験したことでようやく「文学少女見習い」と言えるまでに成長したんじゃないかな、なんて感じました。


でもその成長が物語を劇的に変えることになるとは驚いた。


心葉は遠子先輩がいなくなってからのゆっくりな歩みに火がつきましたし、特にななせは菜乃の影響で一気に変わりました。今までは前シリーズの時を含めてどこか遠慮しがちだったのが、菜乃のおかげでようやく吹っ切れたよ!
何気にこのななせの変化が一番うれしかったかも。いつまでもメソメソしててはせっかくの魅力も半減ですよね。どうせなら彼女にはこれから後悔しないくらいに思いっきりぶつかってほしいものです。


ここまでくれば文学少女になるのも時間の問題かのように思われたのですが、ラストの物凄い引きがヤバイ
一気に先の展開が読めなくなったよ!


総合

☆5つかな。

実は既刊中で一番読了巻が良かったかもしれない(ハッピーエンド的な意味で)。
登場人物も遠子先輩と芥川君以外の前レギュラー陣は殆ど登場して読者サービスもバッチリでしたし。

3巻がどんな内容になるかは全く予想がつかないのですが、逆に気になってしかたないですね。


次巻も期待しています!