ぷれいぶっ!

ぷれいぶっ! (電撃文庫)

ぷれいぶっ! (電撃文庫)

【ストーリー】 突然、夏休みに別世界へ召喚された高校生・雪村統吾。統吾は魔王を倒し、世界を救った勇者となって現代へ戻ってきた。そんな彼の前に謎のスーツ男が現れ、別世界の人間を集めた学校へ転校することに──。
 そう、雪村統吾はこの転校に人生を懸けている。強くて謙虚で人気者、「雪村くんって勇者だったんだ。すごーい!」と女の子にモテモテ学園ライフを満喫するはずが、世界を救った勇者はクラスの中でも最弱だった!?
 そんなアレな統吾でも、気にせず慕って最初に声をかけてくれた可愛い魔法使い・夏森朱音。彼女のために真の勇者になろうと頑張るが……。

予想以上の掘り出し物発見!

かなりノリの良い学園コメディですね。
爆笑するギャグとかはあんまりないんだけど、ちょくちょく面白い個所が何ヶ所もあるし話のテンポが良いもんだから読んでる間はずっと笑っていられます。

それに良い感じにRPGファンタジー要素と学園要素が配合されていて新鮮でした。
主人公の統吾が転入してきた学園は生徒の全員が異世界の出身者もしくは統吾のような帰還者で、各生徒の出身の世界は、典型的なRPGのような世界もあれば人間が統治する地域よりも魔王の統治する地域の方が平和だったりと様々。
なので学園内でケンカすれば魔法の飛び交う戦闘になるし、寮の規則を破ったら3日間蛙の刑、数学の教え方だって

「では次の問題。『たかし君は秒速40メートルで走ることができます。よしこちゃんは、たかし君が走り始めて二秒後に、秒速80メートルの火の球を放ちました。火の球は何メートルの地点でたかし君を焼き尽くすでしょう。なお、たかし君は走り始めた瞬間に最高速に達したものとする』では…雪村くん」
「たかし君はよしこちゃんに何したんだよ!」

ファンタジックです。ちなみに上の答えは

「…たかし君はレジストを使ったので無傷ね。よって答えは『たかし君を焼き尽くすことはできない』」


です。

こんなファンタジックな学園の生徒はもちろん元僧侶や元魔導師で、その中でも統吾はれっきとした異世界の魔王を倒した勇者。…なんだけど、何故か学園の生徒たちは誰もが統吾よりも全然強くて、肉弾戦が苦手なはずの僧侶相手でさえ
僧侶>>>越えられない壁>>>統吾
という主人公最弱設定。


この勇者であるはずの主人公が最弱という設定自体かなり面白いんですが、主人公の統吾と明道のコンビが笑えました。


統吾は実は自分は弱いという現実から目をそらしながら、新しい学園生活を全力で楽しもうとする明るい性格で非常識な学園にツッコミを入れたりハイテンションなボケを繰り出す愛すべきバカ。

明道は異世界出身の格闘家の割にそこまで強くはなく、同じような境遇の統吾と仲良くなりますが、吹っ飛ばされても奇麗なスピンがかかるほど外見も態度もイケメン。でも二枚目というよりは主人公の悪友のポジションの方が似合ってますね。


この二人のギャグのノリを例えるならば「ゼロの使い魔」のサイトとギーシュかな。

「どうよこれ。俺の考えた『いつもはクールなあの娘が実は朝に弱くて無防備な姿に思わずドキッ☆作戦』は!」
「…僕はね、毎日君を尊敬し直している気がするよ」


…うわ、想像以上にぴったりだ!
二人は基本この引用のイメージ通り。良い意味で軽いコントが連続しててホントに読んでて全く飽きてこないです。


この二人の他に、
おそらくメインヒロインの統吾を唯一強い勇者だと信じている純粋で明るい落ちこぼれの魔法使い(それでも威嚇用の魔法で統吾を圧倒できる)夏森朱音と、
基本的に無愛想だけれどアイスに目がなくそこを統吾に突かれて色々痛い目にあう行商人・穂村瑞希がいます。
でもぶっちゃけ私的にメインヒロインである朱音以上にキャラ的にもヒロインとしても魅力を感じましたねぇ。
何だかんだ言いつつ結局おいしいところを持っていってますし、クールデレは個人的にストライクです。



展開は

文化祭に参加するため、部活に入っていない統吾・明道・朱音・瑞希は新しい部を作ろうとするものの、生徒会長の安藤和臣が何をするのかも決めていない部活に割く金は無いとそれを拒否。どうしようかと悩む統吾の下に副会長の水無瀬悠子から、文化祭の宝探しに優勝すれば部を作れると聞き、勇者部(仮)を作るために奔走する。といった1巻から文化祭ネタです。


文化祭ネタの内容はともかく、以上の4人がよくよく見てみると勇者・格闘家・魔法使い・商人(兼魔法使い)とRPGのパーティーとしても中々にバランスが取れている上に、生徒会長がまさかの○○なんで人物の関係図が面白いことになってます。

それにファンタジーな登場人物たちの行動が意外にもリアル。
朱音は元の世界にいたころのあるエピソードから女子高生に憧れていて、この世界出身の統吾と一緒に遊びに行ったりしますし、瑞希は行商人の職業柄この世界の経済システムに興味を持って勉強したり、生徒会長はその職業柄にピッタリの役職についていますし、実際にRPGのキャラクターがこの世界に来たらしそうな行動ばかりなんですよね。


総合

☆4つ+かな。メチャクチャな設定の割にちゃんと造り込まれていて面白いです。

緩そうなストーリーではあるんだけど、実はキャラ・設定・展開全てがハイクオリティでまとまっている良作。
ネット界隈を見てると電撃の新シリーズの中ではあまり注目されていないみたいだけど、おススメです!


終わり方も次の巻が楽しみになる終わり方で期待が高まります!