ラ・のべつまくなし2 ブンガクくんと腐たご星

ラ・のべつまくなし2 (ガガガ文庫)

ラ・のべつまくなし2 (ガガガ文庫)

【ストーリー】「金輪際アンタとは仕事しない!」純文学を志すも『かみたまっ』でラノベ作家としてデビューし、ヒットを飛ばすことになった青年・矢文学(通称・ブンガク)。スケジュールの合間を縫って会うことになった『かみたまっ』のイラストレーター双星は、双子の高校生・星峰海、陸の合同ペンネームだった! 陸に比べプロ意識の高い海は、ブンガクが『かみたまっ』のファンの女子校生とつきあっているという話を聞き、突然の絶縁宣言!! 陸の謝罪を受けたブンガクだが、明日葉にはふたりの関係を怪しまれてしまい――。

正直

1巻で完結していたように思われたんで、続刊が発表されたときはちょっと不安でした。前作「七夕ペンタゴンは〜」も全体的に面白かったけど、オチが微妙なとこがあったんで心配なんですよね。

でも相変わらずブンガクと明日葉の関係は初々しいし、友達の圭介はイイ奴ですし、新キャラが登場してもそこまで雰囲気に変化はなくて良かったです。

…それでも1巻でめでたくブンガクと明日葉は想いを通じあえたことで物語的には完結してもよかったんで、これからどういう方向に物語が進むのか、という心配は依然としてありますが。


このままのクオリティで続いてくれることを願います。

実は

続きが出る!しかも新キャラは双子のイラストレーター(『姉』と弟)!と聞いたときはブンガクと明日葉の関係に割り込む新展開かっ!?と個人的な妄想爆発だったんですよねぇ…。実際のところ星峰姉弟は恋愛方面にはそこまで食い込んで来なかったんでちょっと残念でした。まぁ、こればかりは本当に個人的な願望なんで良いんですけど…。


でも星峰姉弟、特に海の方は自分の作品に対するプライドが高く、1巻の時にはいなかった作品を作るという点で「ブンガクと同等の立場」のキャラで、ブンガクのライトノベルに対する姿勢を改めて考えさせる意味ではとても良い刺激を与えてくれました。


ただ、海の言う「プロとしてのプライド」がむしろ「子供が無理に背伸びしてる感」がして薄っぺらく感じられたのがどうかと思うんですけどね。確かにファンと付き合うのは色々と問題があるかもしれませんけど、「仕事に私情を挟まない」というのが「プロ」なのだとしたら、海自身偏見を持ってブンガクに接しているし、相手の覚悟を見ても意地を張って相手を認めないんじゃ駄目だよなぁ。イラストレーターとして海は凄腕かもしれないけど、まだまだ子供で作り手の「プロ」ではないですね。
実際のところ2巻の内容はブンガクと明日葉ではなく、ブンガクの作品に対する心構えと海の心境の変化に焦点を当てていたように思えます。

ブンガクと明日葉の恋愛はある意味一定のラインを越えているんで、これ以上に発展するにはもう少し時間がかかるのが自然ですし、これからの内容は『作家』としての方面が強くなりそうですね。


その中でも海との会話で言われていた「商品としての本」のくだりでのブンガクの発言はよかった。
作品は売る物として作らなければならないけれど、初めっから『商品』を作ることを意識していたんでは『作品』は作れないですよね。売るれるように造られた『商品』は確かに売れるかもしれないけど、読者を圧倒するような『作品』には成り得ませんからね。
作中のキャラのセリフだとしても、こういった意思を作者が持っていると知ると嬉しいです。



恋愛方面に関しては

ブンガクと明日葉が予想以上に出来上がっていたことには驚きました…。
正確な時間はわかりませんけど、付き合ってからは少なくとも数ヶ月〜半年未満しか立っていないはずなのに、まるで数年来のカップルのようにお互いを信用していてびっくりです。(明日葉に関しては未だに腐女子フィルターでブンガク×圭介な妄想を繰り広げたりもしますけどそこはご愛敬)とてもキスどころか手を繋いだことさえ殆どないカップルには思えないですね。
ブンガクの「明日葉と別かれたら、また一緒に仕事をする」と言われて「嫌です」と即答したシーンは痺れましたよ。明日葉も明日葉で海に揺さぶりをかけられても微塵も動揺しないとこがあったり。

それでいて圭介にオシャレをしたことを指摘されて必死に言い訳する初々しさも持ってるんですよ?ホントに中学生同士のカップルのようで微笑ましいです。



そうそう、柚の出番が少ないのは残念でしたが圭介は今回もいい味出してましたね。

チャラそうな外見なのに友人(ブンガク)のことは物凄く真剣に考え、軽いとはいえ自分の発言でブンガクをピンチに陥れてしまった時の猛省具合だとか、良いヤツ具合が半端ない!
他人の夢に対して真摯な態度で応援もするし、自分も自身の夢に向かって必死なところとか最高ですね!何気に一番好きなキャラかもしれない。

これで柚が加わってラブラブっぷりを見せつけてくれるんだからヤバいね!


総合

話の主題は変わってきましたが堅実な面白さになってきましたね。☆4つ+です。
何気に柚のオタネタも面白かったですし。ちょうど見ていたんで「かんたぁぁぁぁ」には笑ったw


海との軋轢はブンガクの真摯な態度と彼の仲間のおかげでスッキリ解決しましたし、陸の人懐っこい性格はこれまでになかったキャラで益々面白くなってきました。
あとは海がもう少し味のあるキャラになってくれれば文句なしですね。


さて、物語の方も大方問題は無くなって安定軌道に乗ってきましたし、次の巻あたりで一嵐くるかな?
次の巻にも期待です!