薔薇のマリア Ⅰ.夢追い女王は永遠に眠れ

【ストーリー】九頭竜大骨格<レガシオス・ノ・イン>と呼ばれる巨大竜が”蓋”となり、異界生物を封じ込めている地下空間に、財宝を求め危険を試みず潜り込む集団がいた。クランZOO。美しくも頼りないマリアローズを筆頭に今日も万全(?)の態勢でお宝GET!?…のハズだったのに!!分断の危機、思わぬ敵との遭遇と、幾度のピンチをへてメンバーが見たものは、戦慄の魔導女王が誘う”哀しき夢”だった!?優しき《侵入者》マリアと仲間たちの最高な物語、堂々開始!

つい最近


前日譚である「Ver0」を読みましたが、本編はこれが初めてになります。

率直な感想は、メチャクチャ面白かった!


一応前日譚を読んでおいたんで、ある程度この作品の雰囲気みたいなものはわかっていたつもりでしたが、考えが甘かったようですね。

クランというパーティーを組んでモンスターの潜む地下ダンジョンに潜入してお宝を手に入れる。さながらRPGのような世界だとはVer0の感想でも書きましたが、例えば戦闘中一瞬でも判断を間違えれば自分どころか仲間が全滅してしまう逼迫感、例えばすぐ先の曲がり角に何が潜んでいるかわからない緊張感、そんなギリギリな状況での命の駆け引きは妙に現実感があって、そんな臨場感たっぷりな展開に目が離せないんです。んで、気づいたらすっかり読み終えちゃうんですよねぇ。とても300Pちょいとは思えない程中身が詰まってました。

こんなに戦闘シーンに魅力を感じたのは「フルメタ」以来ですかね。
単純に戦闘の描写だけじゃなくてキャラの感情が乗っている戦闘シーンは読んでて飽きが来るどころか燃えてきます!



それに世界観の作り込みの深さもすごいのですが、それ以上にその魅せ方がうまいんですよねぇ。

地下に魔物を封じ込めた国が舞台で魔法や蘇生術が存在し、地下ダンジョンに潜入して稼ぐ集団が主人公、という最低限必要な説明はしてくれるのですが、その世界の成り立ちや魔導師の存在など気になる部分はちょっとずつ小出しで明らかにしていく憎い演出が素晴らしい!

これは次の巻も買っていくしかないですね。

それについては


キャラクターにも言えることですね。特にクランZOOのリーダー「トマトクン」は凄く気になる。

マリア視点でも物凄く強くて頼り甲斐があるけれど謎の多い変人として描かれていますが、度々この世界観から逸脱した

「だが、赤信号、みんなで渡れば怖くない、という言葉もあるだろう」

改造人間だと?うむ。どこかで聞いた覚えのある言葉だぞ」

とか妙にメタ…とは違うと思うんですけど、この世界の人間が聞いて「は?」となる発言が多いんです。実際前者はマリアが、後者はカタリが「?」な反応してます。

とにかく彼は謎だらけで、しかもその謎が多分この世界の深いところに関わってくると思われる謎なんで気になって仕方ない。


まぁ、彼が特別謎なんであって、他のマリア・カタリ・ピンパーネル・サフィニア・ユリカは純粋に色んな意味で人間味溢れる良いキャラでした。

まぁ、マリアに関しては彼(?)を中心にした「Ver0」を読んでおいた分人物像は大体把握してましたし、この巻でもその意地っ張りで(カタリにのみ)毒舌という印象は変わってません。


でも今回はカタリが良い味だしてましたね。

マリアたちとはぐれてからトマトクンとピンパーネル二人の足手まといになり、自分を見失ってしまったカタリの独白は弱音かもしれないけれど彼の優しさが垣間見える部分でもあるし、そんな人間臭さは逆に好感を持てました。そのあとはトマトクンの意外な熱さとピンパーネルの優しさも見れましたし、このシーンはこの巻の中でも特に好き。

それに何だかんだ言って根っこの部分でマリアとカタリが似てて微笑ましかったです。


あとユリカの下っ足らずなしゃべり方と仕草がやたら可愛い過ぎるんですが自分はどうしたらいいですか?緊迫したシーンなのに首をかしげる仕草とか想像しただけで「おもちかえりぃ〜!」状態ですよ。ユリカ可愛いよユリカ。


総合

今まで手を出さなかったことに若干後悔を感じる程の☆5つ。

読み終わってみたら何でもっとこの作品は注目されないのかと疑問に思いますね。ub7637さんがオススメする理由もわかります。

「Ver0」とこの1冊で完全に今までの十文字先生の印象が変わりましたね。思いっきりシリアスな話は依然として苦手ですが、こんな感じなら全然大丈夫どころかもっと読みたいです。


さて、既刊は沢山あることですし、じっくり読んでいこうかと思います。