精恋三国志Ⅰ

精恋三国志〈1〉 (電撃文庫)

精恋三国志〈1〉 (電撃文庫)

【ストーリー】まだ二十歳前の趙雲が流浪の武芸者として旅を続けていた頃。卑劣な罠で瀕死に陥った彼を救ってくれたのは、優音という不思議な魅力を持つ少女だった。地神・玄武の養い子という優音は、朱を帯びた亜麻色の髪と海のように深い蒼の眼という珍しい容貌で、幼さを多分に残していた。
 恩のある玄武の願いを受け、戦を左右させるほどの力を持つ六曜石を取り戻すため、優音と共に公孫〓の許へと向かう趙雲。だが折しも公孫サンは、天下に覇を唱えんとする袁紹と開戦間近だった。天真爛漫な優音に翻弄されながらも少しずつ惹かれ始めていた趙雲は、彼女とともに戦場へと赴き、覇王争いの渦中へと巻き込まれていくのだが、そこで待ち受けていたのは、公孫〓に控えている釈箋という仙霊で──。

いやぁ…


いいですねぇ。この甘酸っぱい雰囲気。

この作品の舞台である三国志はあいにく原作を読んだことも、某無双ゲームをやったことも無いので全く知らないんですが、そんなことは関係なしに趙雲と優音の主人公二人の描写だけでお腹一杯でした。

私が単に三国志に興味が無いだけなのかもしれませんが、正直なところ「三国志」の部分よりも「恋愛」部分の方が断然面白く感じましたよ。でも、タイトルにも「精恋」って文字が入ってるしあらすじだってラブストーリーって書いてあるんだから、そうゆう見方でも良いですよね。


ストーリーの方も予備知識ゼロな私が読んでも混乱しないくらいに簡潔なんで、純粋にラブストーリーとして楽しめました。


主人公の


二人がものすっごい「良い感じ」なんですよ。
ハッキリと言葉にするのが難しいんですが、とにかくこの二人のベタベタと言うほどでもない、トゲトゲもしてない距離感が良いんです。


趙雲は真面目は真面目でも堅っ苦しさを感じない好青年でして、優音の展開の話に心を躍らせたりと純粋な少年がそのまま青年になったという印象ですね。

何か彼の場合だと珍しく各地で女性に言い寄られるという話を聞いても嫉妬心が湧かないなぁ。優音を褒めるにしても嫌味っぽいところとかキザっぽところが無くて、奇麗だと思ったらそのまま言葉に出しちゃうような純粋さを感じます。実際にこんな人がいたら同性・異性問わずに好かれるでしょうねぇ。


優音はある事情によって神獣・玄武に育てられたため剣の腕は一級でも世間知らずで、ちょっと気が強いところもあるんですが、彼女もまた純粋というイメージがピッタリです。

趙雲がああいう性格だから度々照れて怒ったりお節介焼くことになるんですが、何気に趙雲のことを気遣っていたりと本当に純粋な女の子という感じで可愛いです。でも可愛いだけじゃなくて、自分の複雑な生い立ちを受け入れて、自分がやるべきことのために行動する強さも持っています。でも逆にそれが彼女の脆さでもあるんですが…。


戦闘描写に関しては


そこまで魅力は感じないんですけど、この二人の距離感とか雰囲気とかの描写がホント素晴らしい!

お互い会ってそこまで経ってないけれども心のどこかでお互い気を許しているような穏やかな雰囲気と、話が進むとより二人の想いが強まっていく感じが良いですねぇ。

「ははは、成る程、成る程なぁ」
「なっ、なに笑ってるのよぉ、失礼ね。この私がせっかく教えてあげてるのに!」
「いや、すまぬ。話があまりに大きすぎて…なんというか、嬉しくなってしまった。お主の言葉を疑っているわけではないから許してくれ」
(中略)
「さて、よくわからないが…そういえば、玄武様も天帝から地上の鎮護を任されたと仰っていたな。玄武様が嘘をつかれるはずはないであろうし、ならばお主の言うことも本当なのであろう。ははは、しかし、天界とはなぁ…本当にあるのかぁ…ふふふ…」


別に具体的にここが良いというわけではないんですが、何となくこの酒場での天界についての会話が二人の雰囲気が良く出てるんじゃないかな〜、なんて感じました。




総合


☆4つですねー。

主人公二人のことばかりで全然戦闘に関して言及してないですね…(苦笑
ぶっちゃけ三国志ストーリーは舞台というだけでそこまで重要視してるようにも思えないんですよね。物語後半の展開スピードが異様に早かったですし。

実際に三国志好きな人からすれば期待に添えられてるのかは疑問ですが、恋愛ものとして読んだ場合は中々の良作だと思います。


ただ後半の、離れ離れの状態の1年がすっ飛ばしてたのが惜しい。
1巻で話をまとめるというのも作家の技量の一つなんでしょうけれど、もっとこの1年の描写を濃くして欲しかったなぁ。




次の巻も期待しています!



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