薔薇のマリア (2).壊れそうなきみを胸に抱いて (3).荒ぶる者どもに吹き荒れろ嵐

薔薇のマリア〈2〉壊れそうなきみを胸に抱いて (角川スニーカー文庫)

薔薇のマリア〈2〉壊れそうなきみを胸に抱いて (角川スニーカー文庫)


【ストーリー】喪神街で伝説の魔導女王を葬ったマリアは、街で一人の少女ベアトリーチェと出会う。蒼い瞳が印象的な美少女がマリアにもたらしたものとは、儚い微笑、極悪クランの罠、ほんのちょっぴりの強さ、そして――。エルデンの街がクラン同士の抗争にのみ込まれ、マリアに最悪の危機が迫るとき、再びZOOの仲間たちが立ち上がる!

これまでは


あまりに悲惨なストーリーって苦手で出来るだけ敬遠してたんですよね。
一歩引いた目で見れないというか、のめり込み過ぎてしまうというか…、とにかくキャラクターに感情移入しやすいんで主人公たちが苦しい目に合っていると読み続けるのが辛くなってしまうんですよ。


だから主人公補正とかご都合主義みたいなのは割と好きだったりします、が。重要と思われる人物たちがあまりにあっさりと死に、主人公たちに都合のいい展開なんて微塵も起きず、むしろ悪い方にばかり傾くような悲惨な展開ばかりなこの2,3巻は一気に読んでしまいました。


そんな展開が苦しくないわけじゃない。むしろマリアたちが有利な立場に立っている場面でさえ、いつSIXの卑劣な罠が来るのか不安でたまらない。それなのにページをめくる手は止まらず、読み進めてしまいます。

何がそうさせるのかは今の段階ではわかりませんが、とりあえずこのシリーズを読み続けていくことを決めました。



Ver:0とⅠでは


マリアローズにスポットを当てた言わば「マリアローズの物語」でしたが、クランZOOリーダーのトマトクンが創設に深くかかわっていたクラン《秩序の番人》と、トマトクンと奇妙な因縁を持ち、最低最悪のクラン《SMC》の二大勢力を描いた群像劇になっていました。


個人的には群像劇はキャラ一人当たりにあたるスポットが少なくなってしまう印象がありましたが、そんな印象は全く感じさせない一人ひとり複雑な過去を持って生きているように思わせる描写の濃さに改めてこの作者の凄さを見た気がします。


本当に一人ひとりが過去を背負って尚且つ「意思」を持っているんですよね。それは主人公のマリアや23にも関わらず子供の外見をしたユリカに限らず、《秩序の番人》のベアトリーチェや焔、ヨハンなど幹部たちにも言えます。

だから、クランという「大きな個」としてではなくそこに所属するそれぞれ異なる様々な思いを抱えた「小さな個の集合」という本当の意味での「群像劇」が見れました。


でも、だからこそ

多数の死にも一人ひとりの想いが詰まっていて苦しかったなぁ。主要なキャラでさえ容赦なく辱められてあっけなく死ぬのは辛い…。


しかも生き残った人の嘆きもまた堪らない…。

「私はまだ生きている。大好きだった人が、仲間たちが死んで、傷ついたのに、生きてる。
辱められて、汚されて、憎しみだけが植えつけられて、それでもわたしはまだ、生きてる。
どうしてだろう…?私なんかに価値があるとは、どうしても思えないのに」

総合


☆5つ。正直圧倒されました。
ここまで複雑で徹底的な物語というのも中々お目にかかれません。

感想には書いてませんでしたが、2冊の中にはクランZOOやモリーなどの相変わらず明るい部分もあってシリアス一色な内容というワケでもないのがまた魅力の一つなんですよね。
雰囲気の使い分けと言うか、日常・非日常の切り替えがあるからこそどちらの話も引き立つように思えます。



読む前はここまで読めるか不安でしたが、中々お気に入りの作品になりつつあります。
これからもゆっくり読んでいくとしましょう。