ダンタリアンの書架

ダンタリアンの書架1 (角川スニーカー文庫)

ダンタリアンの書架1 (角川スニーカー文庫)

【ストーリー】ヒューイは、かつて所領の半分を1冊の稀覯本と引き替えにしたほどの蒐書狂である祖父から、古ぼけた屋敷とその蔵書の全てを引き継いだ。条件は一つ、“書架”を引き継げ―と。遺品整理に屋敷を訪れたヒューイは、本が溢れる地下室で、静かに本を読む少女と出会う。漆黒のドレスに身を包み、胸に大きな錠前をぶら下げた少女ダリアン。彼女こそ、禁断の“幻書”を納める“ダンタリアンの書架”への入り口、悪魔の叡智への扉だった―。


様々な異能を引き起こす


「幻書」を巡って青年ヒューイと謎の少女ダリアンが事件に巻き込まれていくミステリックファンタジー。


前から気にはなっていたものの手を出していなかったのですが、BOOKDAYs!のつかボンさんの感想を見て購入を決意。


読むだけで超越した知識を得たり異能の力を得るなど様々な恩恵を与えてくれる「幻書」しかし、悪用または持ち主に「幻書」を扱う資格がない場合は…。

主人公のヒューイは蒐書狂だった祖父の遺志を受け継ぎ、黒の読姫と呼ばれる謎の多い少女ダリアンと共に幻書の回収、または幻書にまつわる事件の解決のため様々な土地へ訪れるという、短編形式で構成されています。


「本」


を題材にした数多くの作品の中でも変わり種でした。

大抵の場合本を扱っていたとしても、その本の力が唯の魔法と変わらなかったりするものが多いのですが、この作品の場合そもそも「幻書」が「究極の料理を作る方法が記された本」だったり「読むだけで超越した知識を得る本」といったものなので、トラブル(幻書の持ち主が暴走)した場合は多少戦いますが基本的に戦うような展開にする必要がないんですよね。
純粋に犯人探しをするわけではなく、あくまで事件解決を目的にしているのでミステリに分類するのは少し違うかと思いますが、この方が本当の意味で「本」らしいと感じます。戦っていてばかりだと異能(魔法)バトルものと変わりなくなってしまいますし。

でも「幻書」が一冊一冊まったく異なる異能をもっているからこそ、どんな異能を持っている幻書なのか・誰が幻書を持っているのか、どのような展開していくのかが予想できなくて面白い。だから短編でも読んでて飽きませんし、どんなオチが待っているのか楽しくなります。


変ってるかと思いますが個人的には一話の「美食礼賛」が気に入りました。オチが某有名映画っぽかったので。


しかも


ヒロインのダリアンが可愛い!
普段は偉ぶってて何かとヒューイに文句を言うのですが、その割に甘いものにすぐ釣られたりと見た目どおり子供っぽい背伸びした態度に見えるんで可愛くて仕方がない!
ヒューイの冷静な性格からか、彼女との会話を聞いてると生意気な妹と面倒見の良い兄のように見えて微笑ましいです。

短編なので一話中の心理描写はどうしても少なくなってしまいますがそれでも二人の掛け合いは読んでて面白いですね。

総合


う〜ん…☆3.5ってところですかね。

一話一話はとても面白いんですが、だからこそ物足りなく感じてしまうんですよね。
書き下ろしが多いから仕方がないのは理解できるんですけどね…。

欲を言わせてもらえばもう少し一話を長くしてくれたらと考えてしまうんですが、これくらいがちょうどいいのかもしれませんね。


次の刊も読んでみようかと思います。