スクランブル・ウィザード2

スクランブル・ウィザード2 (HJ文庫)

スクランブル・ウィザード2 (HJ文庫)

【ストーリー】テロ事件から数ヶ月後、椎葉十郎の勤める魔法士を育成する学校・守ヶ丘初等育成校の生徒たちは事件から立ち直りつつあった。十郎は守ヶ丘校の生徒で、魔法士の中でも稀な能力「複数施呪能力」を持つ雛咲月子と、生徒と教師を越えた絆が芽生え始めていた。そんな折、一級特殊執行官である十郎の下に憧れる少女、卯滝唯里が赴任してくる。十郎に四六時中付きまとう唯里のせいでなかなか彼に近づくことができない月子は、課外授業のキャンプで十郎にアピールしようとするが、またしても事件に巻き込まれてしまう。


何故かそんなに話題になっていない作品ですが、私は大好きなシリーズです。
魔法というメジャーなテーマを使いながらも味のあるキャラクターと展開が面白いんですけどね〜
これこそもっと評価されるべき!


前回のテロ事件以来、十郎との距離が縮まり、すっかり十郎に懐いた月子の下に強力なライバルが訪れる!というのが大筋な2巻です。

優等生の顔がとれて素の人懐っこい性格が前面に出てきた月子はいいですね〜
あまり親密ではなかった1巻とのギャップがここまで活かされるとは…。まるで警戒心のとれた仔犬のような可愛らしさに癒されました。


ところがどっこい、新キャラの唯里は月子とは反対の元気一杯で物怖じしない性格なので、初対面の十郎にひっついて離れません。
唯里という思わぬ強敵が現れたおかげで簡単に十郎に近づけなくなり、落ち込む姿はタレ耳犬みたいで可愛かったし、虎視眈々とアピールできる場面を狙ったり、十郎のことを考えて悶々とする月子は新キャラに負けないくらいホント可愛かった!というか唯里は新キャラなのにかませ犬くらいしか出番なかったな〜

あと前巻あれだけ嫌なガキだった最部くんの変わりようも、少年らしい可愛さがありましたけどね。如何にも小学生のガキらしいというか初々しいというか…
でも完全に月子の眼中に無いのは哀れ…w



シリアスな展開としては、アメリカの魔法士の傭兵隊のような企業から傭兵の一人が脱走し、日本へ向かったところへ企業の人間が追って来て、それに十郎や月子たちが巻き込まれます。
後半はこういった戦闘パートオンリーな展開なのですが、万能でない魔法を使った頭脳戦は面白かったです。

火の玉が飛びまわり、雷が炸裂する様な派手さはありませんが、ゲリラ戦とか白兵戦ならではの駆け引きが緊張感を持たせてくれました。
何でもアリな戦闘は漫画でやる分には面白いと思いますが、文章だとこういった制限のある頭脳戦のほうが読んでいて楽しいですよね。
その中だからこそ、唯一無制限のチート存在である月子がどれだけ貴重な人材なのかがわかる機会でもありました。
今後の戦闘はそんな月子の存在が大きく響きそうですね。

それと今回謎の関西弁外人が登場します。
登場した時はどう見てもコイツ悪側だろとか思っていましたが、物語終盤に彼の事情がわかってからは一気に良い人…というより良いオヤジになり、最後の展開にはかわいそすぎるよと思わずにはいられませんでした。

若干事件のほうはあっさり終わりすぎな感じもしましたが、新人の唯里の視点や月子の活躍で十分面白かった。


そしてこの巻の一番の見所、事件解決後の月子の大胆発言には度肝を抜かれました!
その場面のイラストを描いたかぼちゃさんの技量もさることながら、カラーページ指定した編集さんはナイス判断!
HJ文庫さんの評価が上がる一冊でした。