神様のおきにいり

神様のおきにいり (MF文庫J)

神様のおきにいり (MF文庫J)

【ストーリー】稲村智宏はごく普通の高校生に見えるが、ある秘密を抱えていた。その秘密とは、自宅に小学生のような姿の家神・珠枝がいるということだ。それでも友達づきあいが悪いという以外は平穏な暮らしだったのだが、ある日国土交通省から派遣されてきた楠木兼康が訪れたことで、近隣に住む妖怪たちの存在を知ることに。


現在続刊中の「もふもふっ珠枝さま!」シリーズの前身にあたるシリーズです。


シリーズ全体の説明としては、主人公稲村智宏と妖怪たちとの交流を描いたハートフルコメディってところですね。

1巻では稲村家に住み着く霊格の高い珠枝に山の妖怪たちとの仲介役になってもらうため、国土交通省から来た役人楠木兼康が訪れます。
それまで智宏は珠枝という神様(妖怪)の存在は知っていたものの、それ以外の妖怪の存在は見えなかったのですが、珠枝の力によりその存在を認識することができるようになり、愉快だけれど人と相いれない存在である妖怪たちとの交流が始まります。


このシリーズ最大の魅力ともいえる妖怪たちですが、
某墓場さんとこの妖怪のようにオドロオドロしいものだけでなく、どちらかと言えばファンタジックな妖精に近い感じですね。

それぞれの妖怪の特徴もですが、性格がちょっと変な所なんかがとくに和みますよ。
例として、石の妖怪なのに何故かもふもふした触感の石の怪。強力な捕縛の力を操るものの、可愛らしい外見をした捕縛の小人などの小動物系の可愛いい妖怪から、明るく妖艶で、隙さえあれば智宏を誘惑してくる桜の精・好香、兼康の妹の真希のサポートをする無表情な八咫烏のコヒロといった人間の姿をした妖怪まで、その種類は様々です。


基本的にこれらの妖怪たちは面白おかしく友好的な存在ですが、その存在はやはり人間とは全く違うモノです。

人間と妖怪の関係は言いかえれば人間と自然との関係ですね。
普段は人間に対して恩恵を与えてくれますが、時として冷徹なまでに厳しい理で人間を害するように、妖怪もまた畏怖すべき存在でもあります。

私は動物が好きですが、以前のエントリで書いたように動物というのは人間とは異なる世界で生きるものだと知っています。
彼らの世界は人間から見れば非常なまでに厳格なシステム上に成り立っている。ということを突き付けてきますね。

物語の前半は緩やかでほのぼのとした雰囲気がおもしろいのですが、中盤から後半にかけてのシリアスな展開が見事に、そういった妖怪(自然)の陰と陽のバランスがとてもうまく描かれています。


そして智宏は最初こそ何も知らない子供ですが、様々な妖怪たちと出会い相いれない存在と知って、それでもなお彼らとの共存の道を探して奮闘する優しい少年ですね。



1巻単体で見た場合の評価はちょっと妖怪達の出番が少なかったかな〜と思うので☆3つですが、これ以降の間ではもっとたくさんの魅力的な妖怪が出てくるので、未読の方は是非読んで欲しい作品です。