ぷりるん。〜特殊相対性幸福論序説〜

ぷりるん。~特殊相対性幸福論序説~ (一迅社文庫)

ぷりるん。~特殊相対性幸福論序説~ (一迅社文庫)

【ストーリー】父親は有名な脳神経外科医で母親は外務事務官、そして姉はコロンビア大学出身という一家の主人公・ユラキ。エリートな家庭だが、家の中では、自分にべったりな妹のうずみや元天才美少女の姉・綾(現在放浪中)に囲まれ、そして学校では脚が魅力的な部活の先輩小野塚那智と二人っきりの部活動をしたり可愛いクラスメイトの桃川みうに憧れたりと普通の高校生活を送っていた。
しかし、ちょっとしたことを切っ掛けにその日常は壊れ始め、ユラキはある病気に陥ってしまう。
そんな悩める日々が続いても、変わらず”ぷりるん”はユラキの前に現れるのだった。


同社のANGEL+DIVEは脱落してしまいましたが、ラブ系らしいし、この作者さんの作品をもう少し読んでみたかったので購入。


それにしても、

圧倒されましたね…。あらすじの新感覚系ラブストーリーという言葉に納得してしまいましたよ。

確かにラブではあるんですけど、間違ってもラブコメではありませんね。かなーりシリアス。
ラブストーリーになっても十文字作品だな〜。と思わせられる一冊でした。


友人の伝手で憧れていたクラスメイトの桃川みうと仲良なり、早速デートに行く事が決定するも、思わぬトラブルが待ち受けていて徐々に日常が壊れ始めるし、姉の口からある驚愕の事実を聞いたことによって妹とも決裂してその崩壊が更に進んみ、学校・家庭両方にその崩壊は及んでどうしようもない状況へ、という暗黒スパイラルな展開です。

なので、ラブコメとして期待している人はもうちょっと検討すべきかな?というかこのタイトルと表紙の雰囲気は詐欺だw


私は本当はこういうシリアスな雰囲気は苦手なのですが、

それでも、何故か魅入ってしまいました。
仲がいいと思っていた友人の思わぬ陰口を聞いたり、仲が良かった妹はそとに男を作って帰ってこないし、楽しいはずの部活もいざこざがあったり、自分の出生に関する事実を知らされたりと中盤は良いことなしです。

度重なる苦痛にさいなまれ、心休まる場所は無く、次々に壊れていく日常。

それでもこの本に魅入ってしまった理由は、そんな鬱屈とした雰囲気の中にも救いがあったからなのだと思います。


その救いとは、ぷりるん。

ふざけたているようにしか思えないぷりるんですが、
ユラキ本人だけでなく、読者であるこちら側からしてもぷりるんは予想外の心の拠り所であると途中で気付かせてくれます。
気付かれなくても、変わらず想い続け、支え続けてくれる。それは実はとても偉大な存在なのではないでしょうか。


普段は気付かないけれど、例えどんなに日常が壊れても変わらずに傍らにいてくれる、そんな存在がいてくれることのありがたさが身にしみる物語でした。



ただ惜しくらむべきは、

イラストと本文の雰囲気の違いですね…。
イラスト単体で見た場合は背景まで書いていて丁寧ですし、動きのある絵で良いのですが、いかんせん本文との相性が悪い…。




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ub7637と隣り合わせのHIGHな青春