蒼海ガールズ!

蒼海ガールズ! (GA文庫)

蒼海ガールズ! (GA文庫)

【ストーリー】策略により両親を殺され、自身の身も追われることになった皇子シューフェン。彼は命からがら逃げ出し、海を漂流しているところを偶然アラミス王国の軍艦ビシャスホースに拾われる。
ところが、その軍艦はとても若い女性のみで構成されていて例え漂流者であっても男ならば船にあげることを許さない厳格な「男子禁制」の規律がある。そこでビシャスホースの艦長がシューフェンに出した提案は「女装する」というもの。
果たして、逃げ場のない軍艦内でシューフェンは男だということを隠し通せるのか!


戦艦コメディ

以前のたんかん(短感)でも紹介した航海アクションコメディな作品。

男女比1対200の船上という全力で色モノの臭いを漂わせている設定!そしてその中身はそのままエロコメ!…というわけでもなく、厳しい上下関係の支配する船上生活、海の上という密閉された空間での醜い人間関係、そして船員の連携と戦術が物を言う戦艦同士のガチバトルなど何気に凝った描写が多かったです。

ストーリー自体も
臣下の裏切りによって命を狙われることとなったシューフェンは何とか逃げ出し、海で漂流していたところを偶然寄港していた戦艦ビシャスホースに拾われるも、更なる追手がビシャスホースに迫る。
とシリアス路線です。


まぁ、それでも女装すると絶世の美少女になってしまう主人公シューフェン(シュー)とか、そんな彼が男だとは知らずにノリノリでセクハラを繰り出すビシャスホースの船員たち(女)。とコメディパートはサービス精神旺盛なんですけどね。


それにしても200人もの女性がいる中で唯一の男であるはずのシューフェンの扱いが明らかにおかしい…。

単なる甲板磨きのシーンでさえ、

「ほらほら、もっと力を入れて。腕だけじゃなくて、身体全体を動かす感じで」
 四つん這いになったシューフェンの後方にしゃがみ込んで作業を監督するロビンは細かく注文をつけてくる。
「こ、こうか?」
「うん、よくなったよ。もうちょっとお尻を上げる感じで」
「こうか…?」
「ああ…いいね。すごくいい。次は膝と膝の間隔を広げてみようか?」
「こんな感じか?」
「素晴らしい。君は甲板磨きの天才だね?見ているだけでクラクラしてきたよ。鼻血が出そうだ」
「はなぢ?」
「気にしないで?ほら、続けて続けて。今度はゆっくりと…」
 一抹の不安を覚えながら作業を続けていると、奇妙なことが起こった。
 身体を動かしているのはシューフェンなのに、見ているだけのロビンの息がどんどん荒くなっていき…今ではそれが、到底看過できないレベルに達しているのだ。

再度確認しますが、後ろで監督しているロビンが女性で、甲板磨きをしているのシューフェンが男ですからね?
艦長はシューフェンが男だとわかった途端に●そうとしますし、クルーは概ねこんな感じでシューフェンにセクハラを繰り出してくる変態ぞろいです。まぁシューフェンの反応もやたら可愛い(色っぽい)んですけどね。


そんな変態な船員たちも一度戦闘となればがらりと雰囲気を変え、「戦艦の乗組員」の顔を見せてくれます。

この世界には魔法も超能力も超科学力もない世界ですが、だからこそ戦艦同士の戦闘は盛り上がります!
船の戦闘は大砲か乗り込んで直接攻撃かだけなので、大砲に装弾するのも、帆を張るのも、修復するのも全部船員たちの人力によるもの。そしてビシャスホースは海上最強と謳われる国の戦艦。となればセクハラをしていた乗組員も立派な戦闘員になり、いきなりシューフェンを押し倒した艦長も

「私たちにとって、船とは、自分自身の弱さを乗り越えるためのものに他ならない。梃子と滑車を使えば、力の不足は補える。帆を張れば、誰よりも早く帆走ることができる。砲を扱えば、どんな敵をも打ち倒すことができる。この《ビシャスホース》と、それを操る乗組員(クルー)の技量こそ、私たちアラミスの船乗りが数百年かけて導き出した答えなんだよ」
 愛おしそうに自分の乗艦と部下を見下ろすセネカ
 その視線に込められたものは――絶対の自信。
「だからこそ、我が海軍は世界最強。この海の上で私たちに敵う者など絶対に存在しない。いや、存在してはならないのだ。私たちは今日、それを証明する」

と謳い、1対7のという絶対的絶命な戦況をひっくり返します。


総合

☆4つ。ホントに面白かった。
買った当初の予想以上に中身が詰まっていて大満足です。

罵詈雑言の飛び交う軍隊モノではありませんが、戦闘シーンはとても読み応えがありますし、コメディではまた違う面白さを見せてくれます。

明るいアクションが好きな方はオススメです!