いつも心に剣を2

いつも心に剣を〈2〉 (MF文庫J)

いつも心に剣を〈2〉 (MF文庫J)

【ストーリー】魔女の砦での戦いからなんとかユユを助け出すことに成功したレーレ。助かった二人はネルリンという町にたどり着き、そこで聖騎士のヨナハンとセルジュに再開する。一方的に再開を喜ぶヨナハンに連れられ、彼の故郷へと向かうことに。故郷へ帰ることに喜ぶヨナハンだったが、彼の故郷では予想にもしなかった事件が起きていた。


相変わらず出版するレーベルを間違えたんじゃないかと思うほどのシリアスさです…
偏見だと思いますが、MFにしてはテーマが重いですね。どちらかといえば、やっぱり角川か富士見に近い雰囲気です。


2巻も話の筋としては1巻と同様に魔女の疑いをかけられたある人物を助けるために奔走するのですが、ある意味1巻の時よりも状況が逼迫していたので読んでいてハラハラしました。
物語序盤はユユとレーレが一緒にいるので安心して読めていましたが、ネルリンの街でユユが魔女の疑いをかけられていたと知っているセルジュに再会した時はまた捕まってしまうのではないかと心配でした。
しかもその後のヨナハンの故郷での事件がまた怒涛の展開でして…


1巻に引き続き、一人で話を進めてしまうヨナハンはレーレに共感して正直ウザいと感じましたが、あれだけ元気だったヨナハンが落ち込んでいる姿は読んでいて痛々しかった…

婚約者のアラベラに魔女の疑いがかかって落ち込むヨナハンにレーレが言った台詞

「アラベラのために、捨てなきゃならないものがあるなら、迷わず捨てる。すべてを敵に回しても、アラベラのために戦う。あんたにできる?」

は、逆説的にどれだけレーレの中でユユが大事な存在であり、ユユのためならばなんでもやるという覚悟の程を窺わせるもので、1巻で感じた狂信的ともいえるレーレの行動理由がわかった気がします。
レーレはユユ以外に何も持っていないんですよね。だからこそあそこまで彼は必死になることができる。

前回に似た状況にもかかわらず、ヨナハンがなかなか動けない心境というのは、レーレとの対比として見るにはとても良い対象だったんですね。


そして最後の次回への複線は、何も持たないレーレにどういった変化をもたらすのか気になるところです。


全体的な雰囲気としては、

1巻の感想でも書きましたが、とにかく人の醜さがすごく目立つ作品です。
しかもレーレやヨナハンのようなとても純粋な人や、ユユや魔女たちのように真っ直ぐな心をした人たちがいるのことでさらにその醜さが強調されています。
このシリーズだけ読んでいると人間不信になりそうですね…

でも、そんな醜さが溢れているにもかかわらず、どこかしら童話的な土臭さがあって好感が持てました。
ユユとレーレの関係が崩れそうという不安はありますが、次巻もその関係が崩れないことを祈っています。