聖剣の刀鍛冶♯5.Sacrifice

聖剣の刀鍛冶(ブラックスミス) 5 (MF文庫J)

聖剣の刀鍛冶(ブラックスミス) 5 (MF文庫J)

久々に聖剣の刀鍛冶の感想ですね〜

【ストーリー】軍国から帰ったきたセシリー達は、混乱を極めた三国一都市による対ヴァルバニル戦の全権に関する問題もとりあえず保留となり、しばしの休息を得ることになった。セシリー、ルーク、リサ、アリア各々の休息の日々が描かれる第五巻。




THE・最強オヤジ伝説

ハンニバルのおっちゃん大活躍!
彼の強さを一言で表すなら…戦国無双

5巻はこれまでの怒涛の展開の箸休め的な日常パートの短編集が四話と、これからの展開への序章一話構成になっているのですが、その中の一話でこんな話があります。

【日々 Episode Cecily】
セシリー達が軍国から帰って来てそれぞれが休息の日々を堪能する傍ら、団長ハンニバルと独立都市市長のハウスマンは空席となっていたセシリーの所属する三番街の自衛団の副団長を決めることを画策し、ハンニバルの独断で選定方法は実力勝負に決定する!
しかも当日ハンニバルの口から出た言葉は団員たちを戦慄させた!

「おはよう諸君。お前たちの本日の相手はこのワシだ。手加減はしないから覚悟しろよ」
有り得ね―――ッ!!


確かに3巻で帝国の人外と対等に渡り合った実力はありましたよ。でもまさかここまで圧倒的とは…。
まさに戦国無双。まさに、「自衛騎士団の団長は化け物かっ!?」

これまでならば登場する中で一番の強さを持つキャラは誰、と聞かれたら間違いなくルークでしたが、この話を読んだ後ではルークの強さも霞んでしまいますw

でもそんな化け物を相手に結束を固めていく三番街の自衛団の面々は良かったですね。
今まで何かとセシリーに突っかかってきた嫌味なキャラ、レジナルド・ドラモンドさんも今回はいいところを見せてくれます。
圧倒的な力をふるうハンニバルに立ち向かう、元険悪な仲だった二人の協力戦は熱くなりましたね。


こんな熱い展開だけでなく、女性陣に詰問されるルークの話や、珍しくアリアやリサにスポットを当てた話も。

【日々 Episode Aria
アリアは独立都市に帰ってきてからある存在に頭を悩ませていた。その存在とは軍国で出会った研究員のユーイン・ベンジャミン。研究と独立都市の窓口役という目的で独立都市に来たものの、アリアを見かけると犬のように寄ってきて懐いてくるのだ。今ではその場面を見た仲間たちにも勘繰られるという事態に…


まさか4巻でフラグが立っていたとは…!
いつもならばセシリーとルークとの仲を応援(冷かし)しているものの、いざ自分がその対象となったときの反応が可愛かったですね〜。しかもその弁解に「自分の好みはむしろセシリー」と言った時のセシリーの反応

(彼女は「こ、困るっ。私にはル――」と何事か呟いていた)

も見れてお腹いっぱいです。

アリアに懐きまくってるユーインも中々味がありんす。
男にしておくにはもったいない位良いキャラですね。是非とも彼にはイヌミミと尻尾を付けてあげたいw

この話は明るいパートに思えますが、その下にはアリアの出生に関わるシリアスな雰囲気が流れていました。
外見は人間になれるけれど、どうしても魔剣という本質から逃れられない運命を背負って苦悩するアリアにユーインというパートナーができたのは読んでいる立場からしても嬉しかったですね。
ユーインも、彼は彼で自分の過去から逃げずに立ち向かう男らしい一面があって魅力的だと思います。


個人的には単純に楽しめたという点ではこの話が一番面白かったかな。
オチもしっかりしていたし、またまた登場したレジナルドさんが思いのほかいい人で気に入りました。



そして<日々>という日常パート四話の後の【聖剣の鞘】では、謎となっていた「聖剣の鞘」がいよいよ明かされます。

セシリーにとってもルークにとっても、そしてアリアやリサなどの仲間たちにとってもそれは非情なことで、周囲の人がそれを隠し通していた理由も理解できます。
しかしそんな運命に負けるようなルークとセシリーでは無いですね。ここで迷うことなくルークを信じそれに応えるルーク、二人の絆が強まっていることを改めて確認させてくれるストーリーでした。



このシリーズは5巻しか出ていないとは思えないほど内容に厚みがありますね。
そう考えると今回の休息編はキャラクターにとっても読者にとっても丁度いいタイミングでした。
しかし休息編とは書きましたが、同時に次巻への助走としての面を持っていていいテンポでストーリーが進んでいきます。
6巻からはまた怒涛の展開が待ち受けているようなので、今から期待して待っています。