聖剣の刀鍛冶3.Fool

【ストーリー】セシリーに叱咤されたルークはリサと共に灰かぶりの森へ野草を摘みに来ていた。その頃セシリー達の暮らす独立交易都市・ハウスマンでは体中から武器を生やした異形の人外が暴れていた。セシリーたち自警団はその人外の対策にあたっていたが、人外は易々と自警団の包囲を突破し、灰かぶりの森へ向かっていくが―――!?

太刀筋閃き変幻する壮大なファンタジー叙事、第三弾!!


いや〜、もうこの作品に完璧に虜にさせられてしまいましたよ!ファンタジー小説でここまで魅了された作品はそうそうないです。
素晴らしいファンタジー小説というのは数々ありますが、この作品は特に私の好みにぴったり来てますね。

ストーリーにも魅力はありますが、何よりこの作品の一番の見どころは登場人物です。
今回は前巻、対バルバニル会議で登場したシーグフリートが現れるんですが、これがまたすっごい悪役なんですよね。
ルークがリサに秘密にしていたことをさらりと暴露するし、セシリーには肉体的にも精神的にもかなり非道なことをしたり、悪役として大活躍してます。
でも、憎いヤツとは思うんですが、嫌いにはならないんですよね。言ってることが矛盾していると思いますが、「良い悪役」とでも言いましょうか?行動は確かに残虐非道ですが、その行動のなかに何かしらの芯があるんだと思います。
ただベクトルが悪の方を向いているだけで、もしそれが正義の方を向いていたとしたら一流のヒーローになるんじゃないかな?部下のフランシスカの気持ちがわからんでもなかったり。


そして今回、一番の中心はリサですね。
今までただ守ってもらうだけだったリサですが、一歩踏み出す勇気を見せてくれます。

「私は・・・何をしているの?」
今までのように自己主張せず、一歩引いて、誰かの背中に隠れて。
これからもそうやって息をひそめて生きていくつもりなの?
己の生き死にを別の誰かに委ねて生き続けるの?
予感があった。ここで立ち尽くしたままではいけないよ言う予感。
リサはだから、頬を伝う涙を拭う。
そしてその足を前へ――

この物語に登場する女性はみんな強くて、いや――強く在ろうとする姿がとても美しく見えます。
シーグフリートに自分の生い立ちに関する更なる秘密を言われた時もただ悲しむのではなく、そこから立ち上がる強さは本当に綺麗だと感じました。


あと忘れてはいけないのは自衛団の団長・ハンニバルのおっちゃんですね!
今まで彼が活躍するシーンは見られなかったのですが、今回は人外と対等に渡り合ったりと実はかなり強いんですよ!
良いですね〜こういった五十以上のおっさんが活躍する話は大好きですよ〜


全体を通してみると今回はバルバニル関連についてはあまり話は進みませんでしたが、各キャラクターの覚悟がより一層強まった印象を受けました。
ラストで何やら次回に続く重要な伏線が張られていて益々気になります。

セシリーは顎を上向け、濡れた瞳で彼を見上げた。
「・・・私はかわいく、ないのかな・・・?」


今回もセシリーのかわいさの破壊力は凄まじい・・・!