賭博師は祈らない
十八世紀末、ロンドン。
賭場での失敗から、手に余る大金を得てしまった若き賭博師ラザルスが、仕方なく購入させられた商品。
――それは、奴隷の少女だった。
喉を焼かれ声を失い、感情を失い、どんな扱いを受けようが決して逆らうことなく、主人の性的な欲求を満たすためだけに調教された少女リーラ。
そんなリーラを放り出すわけにもいかず、ラザルスは教育を施しながら彼女をメイドとして雇うことに。慣れない触れ合いに戸惑いながらも、二人は次第に想いを通わせていくが……。
やがて訪れるのは、二人を引き裂く悲劇。そして男は奴隷の少女を護るため、一世一代のギャンブルに挑む。
4巻一気読み。
●
当初天才賭博師が奴隷の娘に惚れて無双する話とおもってましたが
これは、シリーズを通して賭博師としてしか生き方を知らないラザルスの賭博師という生き方に対する葛藤の話だったんですね…。
●
「勝たない」「負けない」「祈らない」。
ラザルスは養父のそんな教えにしがみつくような、それこそ神の教えかの如く守ろうとするんですよね。
皮肉みたいだけど、聖職者から程遠いのに、その生き方は敬虔な信徒の様。
でも、このままだといずれ倒れることに理性では納得してるかのようだけど、無意識に怯えてる。
そこに、リーラとの出会いで更に葛藤が生まれてるんですよね…。
BLACK LAGOON日本編の「生きようとしたな?」に通ずる、生きようとしない、自分の生命すら賭けの対象とするような冷酷さ、その強さが、生きたいと思い始めたことで揺らいでる。
1巻単体でみるとハッピーエンドに見えるけど、実は1巻がラザルスのそれまでの生き方の崩壊が始まっていたんですね…。
そんな賭博師としての生き方と内心の想いの板挟みにずーっと苦しんでいたのが、最終巻手前の4巻でようやく"その先"をうっすら掴めるようになる。
そこに気がつくまで、なんでラザルスはこんなに悩んでいるのか、何かから逃げるように「どうでもいい」と口癖を繰り返すのか、不思議でした。
●
賭博や駆け引きの緊張感もさながら、繰り返しになりますが、聖職者とは対極な生き方でありながら、その純真さは聖職者そのものなラザルスの葛藤にとても惹き付けられました。
5巻で完結とのことですが、どうか彼の生き先に幸いがありますように。